〇べっ甲とは
一般的にべっ甲とと呼ばれるのは、タイマイと呼ばれている海亀の甲羅のことを指します。
タイマイはおもにインドネシアやセーシェル、西インド諸島、カリブ海などに生息し、メスは甲長(甲羅の長さ)が大きいもので93㎝、オスは1メートル以上あるといわれています。
主にサンゴ礁の隙間にいる獲物や海綿類を食べています。
〇べっ甲の原料について
べっ甲の原料(タイマイ)は、乱獲やガス田や油田開発による海洋汚染などで生息数が減少、そのおかげで1975年のワシントン条約が発効、輸出入禁止になりました。それでも1992年までは、輸入されていましたが、翌年には輸入は完全に停止され、現在まで正式なルートではタイマイは国内に入ってこなくなりました。
なので、それ以前に輸入された原料を国内の市場で取引し、細々と商品化されています。
べっ甲業界には2つの団体があり、それぞれ市場をもっています。「市場?」って思いますよね。でも「市場」があるのです。
市場には2か月に1回とかで、原料の売買があります。市場に上がるのは、主に廃業した職人が持っていた原料などです。またいろんなルートから市場に上がるそうです。ただし、当然ですが組合に入っていない職人は入札に参加できません。青果市場や魚市場と同じ仕組みです。
当職人は二つある組合のひとつの組合に入っており、その組合の市場で原料を仕入れることが多いそうです。
ただ、どちらの組合にも言えることですが、年々原料の質、量が減っており、値段も高くなる傾向です。特にみんなが欲しがる「綺麗な原料=高級な原料」が手に入らなくなってきてるそうです。
ピックの原料は綺麗な原料でなくても構いません。普通の黒っぽい原料であればいいのです。しかし、ピックの原料も市場にはほとんどないというのが現実です。また、そんな原料を市場に出しても入札する職人はいないのです。
なぜか?
答えは簡単です。
昔も今もべっ甲細工(アクセサリーや置物)を欲しがる人はそれなりの金持ちです。なので、綺麗なものを欲しがりますので、安い黒っぽい柄は敬遠されます。職人もそんな売れないものを作れないので黒っぽい原料は必要ない。市場に出ても入札されないのでそもそも市場にもでません。
〇ピックの原料になるタイマイ
ピックの原料はほとんどの原料が対象になります。ただ、対象になる=作れるということですが、例えば皆さんがピックを作る(昭和の人なら下敷きでピックを作った経験ありますよね?)時、下敷きみたいな薄いプラ板とアクリルの2ミリくらいある板どちらがつくりやすいですか?もちろん、この場合1ミリくらいの標準の厚みのピックを作るのですが、下敷きの方が作りやすいですよね。2ミリのアクリルなら1ミリ削れないといけないし、そもそも2ミリのアクリル高いですよね。下敷きなら安いけど・・
そうなんです、べっ甲ピックも同じ。厚い原料でも作れます削れば。でも厚い原料は、その分原価が高い。薄いのは安いけど厚いのは高いのです。
なので同じ1ミリのピックを作る場合、薄い原料なら安く作れるけど、厚い原料なら高くなるんです。
実際ピックを作る原料は「薄甲(うすこう)」と呼ばれ厚みも1.5ミリ程度の原料です。その上は2ミリ、3ミリ、5ミリなど厚くなればなるほど高くなるのです。
そもそもべっ甲細工は装飾品などを作るため、薄甲より厚いものが重宝されます。薄甲は何枚も重ねて万力や下手な人は接着剤を使って厚い原料にしてから制作に入ります。なので薄甲は好まれないのです。当然、市場にはそんな売れない原料は滅多に上がってこないのです。
〇ピックは薄甲でつくります
ピックはもちろん薄甲で作っています。なのでこの値段です。これを2ミリで作ると1.5倍程度価格は上がります。当然、これ以上高くなればそもそもべっ甲ピックを使う人は少なくなります。なので今の価格がギリギリかなと思っています。
〇薄甲がなくなれば終わり?
薄甲が手に入らないと値段が上がります。1枚2000円以上になります。でもこれではもう買わないでしょう。だから、薄甲が今度手に入らないとべっ甲ピックは辞めるかもしれません。当社以外でもべっ甲ピックを作ってる業者はいます。でも、そのサイトを見ると「〇月〇日以降発送します」と書かれていたりします。恐らく薄甲などが手に入りにくいのではないかと推測できます。
〇本当にいつまでできるかわかりません。
本当にいつまで作れるか職人でもわかりません。薄甲が手に入るか入らないかが問題です。
〇ピックガードも同じです。
当社はべっ甲ピックガードも作っています。しかし、これも薄甲が手に入るかどうかで今後も作れるかわかりません。